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2019.09.04

DIY型賃貸借の基本とトラブルの防止について

1.DIY賃貸とは

DIY賃貸とは、賃貸物件でありながら、借主がDIYをすることのできる賃貸借契約やその物件を指します。通常では、例えば入居中に壁を自分好みに塗ったり、飾り棚を付けたりと、いくら様々なDIYを行っても、当然のことながら退去の際には元通りに原状回復をしなければなりません。しかし、DIY賃貸においては、退去時の原状回復義務をなしにできる場合がある等、借主がDIYを楽しむことができるように配慮がされています。 なお、実施されるDIYについては、借主自らが実施する場合もあれば、専門業者に発注する場合もあります。

2.DIY賃貸のメリット

DIY賃貸における貸主、借主双方のメリットは次になります。

<貸主のメリット>
●修繕をせず、現状の状態で貸せる
●物件への愛着から長期入居が見込まれる
●明渡し時に物件の内装等の質が向上している可能性

<借主のメリット>
●自分好みに改修ができる
●原状回復義務をなしにできる場合がある
●工事代金を負担する代わりに賃料が安め

3.国も後押ししているDIY賃貸

全国的に空き家が増えていると共に人口減少社会に突入している状況の中、中古住宅流通が社会的な課題となっています。そこで、空き家活用や中古住宅流通促進のため、個人所有の住宅の賃貸住宅としての流通を促すべく、国土交通省ではDIY賃貸の普及に取り組んでいます。

取り組みの内容としては、DIY賃貸による契約当事者間のトラブルを未然に防止する観点から、平成28年に『DIY型賃貸借に関する契約書式例』と、活用にあたってのガイドブック『DIY型賃貸借のすすめ』を作成しています。また、DIY賃貸により大規模な工事を行う場合や転貸借(サブリース)物件でDIY賃貸を行う場合等、様々なDIY賃貸の実施方法があることを踏まえ、平成30年に『DIY型賃貸借に関する契約書式例』を改定すると共に、『家主向けDIY型賃貸借の手引き』を作成しています。

<国土交通省HP>http://www.mlit.go.jp/

4.貸主の「DIY賃貸の手順」

貸主からみたDIY賃貸の手順例としては、下記のようになります。

STEP1:物件募集・事前協議
●DIY可能物件として入居者募集
●DIY工事内容や原状回復等の取り決め事項について借主と協議※

STEP2:契約
●賃貸借契約書を取り交わす
●借主が希望するDIY工事の内容が記載された申請 書に対し、承諾書を交付する
●合意書を取り交わす

STEP3:DIY工事
●立会い確認
●DIY工事の予定箇所を写真に撮る等で保存する
●DIY工事が申請書通りの内容かどうか確認する

STEP4:入居中の管理/入居中のDIY工事
●DIY工事箇所以外の管理・修繕の実施(一般的な賃貸借契約と同様)
借主が入居中にDIY工事を希望した際はSTEP1の※へ

STEP5:明渡し時
●立会い確認

なお、契約手続きと賃料の流れは下図のようになります。一般的な賃貸借契約の流れと比較して、その特徴をおさえておくのが良いでしょう。

5.DIY賃貸に関する取り決めのポイント

例えば、「入居者が手を加えて良い範囲はどこまでなのか」、「どのラインから原状回復の責任範疇となるのか」等をしっかりと契約時に決めておかなければ、退去時にトラブルとなってしまう可能性があります。したがって、DIY賃貸においては、特に次の内容について、しっかりと取り決めをしておく必要があります。

①所有権について
DIYでは、例えば貸主の所有物に装飾や木材等を付けたり、一部分について改修をしたりするため、「工 事をした部分に関する所有権が貸主と借主のどちらにあるのか」について、貸主と借主の合意のもと取り決めておきます。なお、DIY工事によって住宅と一体となり、不可分な部分(例:壁に塗料をぬった場合や一体となった設備)については、その所有権は一般的に貸主が持つこととなります。

②明渡し時の収去と原状回復について
まず、DIY工事部分について明渡し時に残置するのか、それとも撤去するのかを取り決める必要があります。残置する場合は、原状回復義務はなくなると考えられますが、工事の影響で本来の設備の機能が失われてしまっているような場合(例えば、コンロが使用できなくなっている等)は、その分の補修を借主に求めるのかどうかを取り決めておかなければならないでしょう。また、DIY工事部分を撤去する場合は、原状回復義務が発生するのかどうか、原状回復義務をありとする場合はどこまでの原状回復を求めるのか等も取り決めておく必要があります。

③精算について
DIY賃貸では、工事費用は借主負担で行う場合が多いですが、貸主に費用請求をする場合もありますので、費用精算の有無についても、念のため取り決めておくのが良いでしょう。

④施工について
DIY工事の際に、物件や第三者に損害を与えてしまった場合の責任の所在を明確にします。

⑤管理・修繕について
入居期間中の管理・修繕を誰が行うのかも、明確にしていくと良いでしょう。

2019.08.05

敷金・原状回復トラブルと2020年4月の改正民法施行について

1.相談件数の推移

消費者庁が所管する独立行政法人であり、国民生活の安定及び向上に寄与するため、国民生活に関する情報の提供及び調査研究を行う「国民生活センター(http://www.kokusen.go.jp/)」には様々なトラブル相談が寄せられます。2016年度の賃貸アパート・マンションに関するトラブル相談件数は32,681件であり、これは全体の相談件数の第5位となっています。なお、敷金・原状回復トラブルはこの中で13,905件となり、賃貸住宅に関するトラブル全体の42%を占めています。また、最近の敷金・原状回復トラブルの相談件数の推移は次のようになります。

・2015年度:14,236件
・2016年度:13,905件
・2017年度:13,209件
・2018年度:11,688件
※相談件数は2019年3月31日時点のもの

2.最近の相談事例

・4年間住んだ賃貸マンションを退去したが、立ち合いで壁紙やクロス等の原状回復費を請求すると言われた。納得できない。

・賃貸マンションの退去に伴う原状回復費用のうち、ハウスクリーニング代の支払いに納得が行かない。支払わなくてはならないか。

・敷金礼金0円との説明を受けて賃貸アパートを契約し入居したが、後日敷金の請求を受けた。

3.敷金・原状回復トラブルが起こる理由

①敷金・原状回復のルールが明確には理解されていない
「退去時に敷金が返還されない」「設備が自然損耗により壊れたのに修繕費用を請求された」というようなトラブルは一体なぜ多く発生してしまうのでしょうか。それは「敷金の存在は多くの人が知っているが、その位置づけや返還に関するルールが明確には理解されていない」ということに起因するでしょう。敷金に関する取り決めについては、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定めており、ここには基本的な指針が示されています。しかし、ガイドラインに「賃借人が普通に暮らしていた場合の劣化は賃貸人の負担」とされていたとしても、それぞれのライフスタイルによって変わってくる「普通の暮らし(部屋の通常の使用)」を杓子定規に定義することは難しいといえます。価値観の違いが、そのままトラブルに発展してしまいがちなのです。

②賃借人が「善管注意義務」の存在を知らない
善管注意義務とは「善良なる管理者の注意義務」の略であり、賃借人は賃貸人に対し、借りた物件を明け渡すまで善良な管理者の注意(常識的な管理意識)をもって、その物件を保管しなければならないとされています。これはつまり、賃借人が物件を故意に破損したり、物件管理上の過失があると認められたものに対しては、損害賠償の義務が発生するというものです。なお、例えば「日常清掃を怠ったためにダニが発生した」「換気をしなかったためにカビが生えてしまった」というものも物件管理上の過失とされるケースがあります。
 
③退去時の立ち会いが行われていない、または立ち会い 時の確認が不十分
 退去時に関係者(賃借人、賃貸人、管理会社等)の立ち会いがなく、双方で壁、床、柱等の傷や汚れの現状確認をしていない場合や、立ち会い時の現状確認が不十分、あるいは立ち会い時に確認した点を記録に残さなかった場合等は、後で賃借人にとって身に覚えのない損耗個所を指摘され、修繕費の追加負担を求められる等のトラブルにつながりやすいのです。

4.来年の民法改正によって何が変わるのか

①2020年4月1日、改正民法施行
「契約や金銭の支払いに関するルールを定めた民法の規定(債権法)を見直す改正法案」が2017年5月26日に成立、2020年4月1日に施行されることになっています。なお、この改正は1896年(明治29年)の制定以来、実に120年ぶりのものとなります。

②敷金・原状回復との関わり
敷金・原状回復に関する主な改正点としては、「敷金の返還」や「賃借人が経年変化(時間の経過と共に起こる不可抗力的な変化)による物件の原状回復義務を負わない」ということが明確にされました。

③改正内容が浸透するまでは時間が必要か
しかし、ここで改めて敷金の取り扱いが決まったからといって、すぐにトラブルがなくなることはないと考えられます。なにせ、120年ぶりの民法改正です。賃借人や賃貸人、管理会社にも「今までの習慣や常識」が染み付いてしまっているため、改正内容が「遵守すべき新常識」として浸透するには、ある程度時間を要すると考えられます。むしろ、改正内容を理解する人としない人との間では決定的な認識の違いが生まれてしまうため、さらにトラブルが発生してしまうことも十分に考えられます。したがって、賃貸人としては、今回の改正内容をしっかりと把握しておくと共に、自分自身の賃貸経営との関わりを認識しておく必要があります。また、改正内容について、賃借人や管理会社等の関係者と認識合わせをしておくのも良いでしょう。

2019.07.08

夏は入居者からの問い合わせが急増-エアコンに関する費用負担について

1.エアコンの買い替え・修繕費用は誰が負担するのか

夏に向けて、入居者からの問い合わせが急増する生活必需品であるエアコン。この多くがエアコンの不具合による買い替えや修繕の依頼です。では、この費用は賃貸オーナー、入居者のどちらが負担するものなのでしょうか。

①賃貸借契約書と重要事項説明書の記載内容に従う
 まずは、賃貸借契約書と重要事項説明書の記載内容を確認します。修繕費用については、「特約事項」のスペースに書かれていることが多いです。

②書面の記載がない場合は
 エアコンが「設備」として備え付けられていれば、費用負担は賃貸オーナーがするものとなります。なぜならば、入居者はエアコンがあることを前提として物件を借りているからです。

③入居者の過失による故障の場合は
 例えばエアコンの清掃を全く行わなかった、物をぶつけて壊してしまった等、入居者の設備維持管理の不手際による故障の場合は、入居者の負担となるケースが多くあります。これは、「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」という「借りた物件や設備を大切に使わなければならない」という義務を入居者が負っているからです。

④エアコンが「設備」でない場合は
 まれに、エアコンが「設備」でなく前入居者が置いていったもの、つまり「残地物」であるケースがあります。このような場合は、賃貸オーナーが前所有者にエアコンを置いていくことを許可し、次の入居者が使用することを認めた「サービス品」としての取扱いになるので、一般的に買い替えや修繕費用は入居者が負担します。なお、修理手配等も入居者に行ってもらうことになります。

2.エアコンが「設備」である場合の<ケース別>問い合わせ対応方法

①エアコンが壊れているという問い合わせ

・エアコンが動かない
・エアコンを点けても部屋が冷えない、暖まらない

 上記のような場合は、故障が疑われるので、修理や買い替え対応となる可能性が高いでしょう。ただし、「エアコンの効きが悪い」というのは清掃不足でほこりが溜まっているだけということも考えられますので、その旨を確認しておくと良いでしょう。

②エアコンの性能に関する問い合わせ

・エアコンの音がうるさい
・旧式のエアコンで電気代がかかりすぎる

 故障ではないけれど、日常生活をおくる上で不都合があるという場合は、エアコンが壊れているわけではないので、賃貸オーナー負担の買い替えや修理は必須ではないといえます。しかし、更新に対する判断への影響を加味する場合や室外機の音もうるさくて隣の入居者からも苦情がくるような場合は、費用を負担してでも対処をした方が良いケースもあるでしょう。

③エアコンの汚れに関する問い合わせ

・エアコンが汚れている
・エアコンがカビ臭い

 上記のような場合は、ワンシーズンでも入居者が使用していれば、一般的にクリーニング費用は入居者負担になると考えられます。まずは、エアコンの清掃を勧めるのが良いでしょう。

④エアコンの増設に関する問い合わせ

・エアコンが無かった部屋にエアコンを設置したい

 これは、賃貸オーナーの判断に委ねられる内容です。ただし、このような問い合わせをしてくるのは現在の入居者だけだとは限りません。エアコンは部屋で過ごす上での必需品なので、今後も同様の問い合わせがある可能性があると共に、複数台のエアコンは物件の売りにもなりますので、入居者の希望に応えるという判断をしても良いかもしれません。

2019.06.15

賃貸経営における外国人との付き合い方のポイント

1.在留外国人数は過去最多を更新

2019年3月22日、法務省は2018年末の在留外国人数が2017年末から16万9,254人増えて273万1,093人となり、過去最多を更新したと発表しました。なお、この外国人の数は日本の総人口の約2%に相当します。また、在留外国人の国籍と在留資格の種類は次のようになります。

<在留外国人の国籍(多い順)>1:中国(76万4720人) 2:韓国(44万9634人)  3:ベトナム(33万835人)

<在留資格の種類(多い順)>1:永住者(77万1568人) 2:留学(33万7000人) 3:技能実習(32万8360人)

2019年4月から施行された「改正出入国管理法」によって新設されるあらたな在留資格(特定技能1号・2号)もあり、今後はこちらの資格を持つ外国人も増えてくることでしょう。

 

2.在留外国人の多い地域とは

<在留外国人がいる地域(多い順)>
1:東京都(55万5053人) 2:愛知県(25万1823人)3:大阪府(23万3713人)4:神奈川県(21万1913人)
5:埼玉県(17万3887人)6:千葉県(15万2186人)7:兵庫県(10万7708人)8:静岡県(8万8720人)
9:福岡県(7万3876人)10:茨城県(6万3976人) ※「在留外国人統計」2018年6月より

当然、在留外国人が多い地域ほど、賃貸住宅に対するニーズが多いことになります。なお、ここで紹介した「在留外国人統計」では全ての都道府県について在留外国人の数が公表されています。<在留外国人統計URL>http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_touroku.html

 

3.外国人を入居者として受け入れるべきか

外国人の賃貸需要が高まる中、やはり入居者に外国人を迎えることに不安を感じる賃貸オーナーは多いようです。実際に、「外国人お断り」という賃貸物件も決して少なくありません。賃貸オーナーが外国人入居者を歓迎しない理由としては、生活習慣や文化の違いから生じることのある「トラブルの可能性」を考えてということが主なものでしょう。しかし、入居者トラブルは日本人相手であっても当然起こるものであり、日本人よりもマナーの良い外国人入居者も多く存在しています。したがって、空室対策に取り組みたい賃貸オーナーは、外国人入居者ならではの対応のポイントを知っておき、入居者として迎えるということも検討してみてはいかがでしょうか。

 

4.外国人入居者のメリット

メリット①:一度借りたらなかなか離れない
外国人は、もちろん自分自身が賃貸物件を借りづらい状況にあることを把握しています。したがって、一度借りることができたらその契約を大事にする傾向があります。

 

メリット②:築年や設備などを日本人ほど気にしない
物件の人気に直結する築年や設備。これも、外国人は日本人ほど気にはしないようです。また、「借りられる」ということを重視する外国人は、駅から多少離れていても問題なしとするケースも多いのです。

 

メリット③:紹介で入居者が集まりやすい
外国人には同じ出身国同士のネットワークがあります。この結び付きは非常に強く、たとえ物件から退去することになったとしても、次の入居者が即座に紹介されるというケースが多いようです。

 

5.外国人入居者のデメリット

デメリット①:言葉の壁がある
賃貸契約において「なんとなく理解を得た」ではいけません。通訳を手配したり、専門の業者に依頼するなどして確実に意思の疎通を図れるようにしましょう。

 

デメリット②:生活習慣の違い
生活習慣の違いから、部屋を汚く使われてしまったり、ゴミ出しのルールが守られなかったりするケースもあるようです。「日本の賃貸ルール」「部屋の中でやっていいこと悪いこと」を伝えておくなどの対策が必要です。

 

デメリット③:隣人・近所迷惑
 入居者によってはホームパーティーを連日開催したり、深夜まで大声で騒ぐなどの迷惑行為も想定されます。こちらの対策についても、「あらかじめルールを伝える」ことと「トラブルがあったら即対応する」ことで習慣化させないように努めるべきでしょう。

 

デメリット④:家賃滞納
 お金にルーズな外国人もいるため、賃貸オーナーは家賃滞納の不安も大きいと思います。そこで、外国人入居者向け家賃保証サービスを活用することでリスクを回避するようにしましょう。

 

6.外国人入居者との賃貸契約時のポイント
   
ポイント①:簡単な日本語でゆっくりと話す+筆談
先に、日本語スキルが不十分な外国人に対応するためには通訳や専門業者に依頼すべきと書きました。日本語が話せる外国人には、確実に内容を伝えるため、分かりやすい言葉でゆっくり話すようにしましょう。数字などは、筆談で確実に伝えるようにします。

 

ポイント②:日本語の契約書やサインで問題ない
契約書は、原則として日本語で記載されたものを使用します。また、記名押印の箇所については「サイン」をしてもらえれば問題ありません。

 

ポイント③:共益費などについて確認をする
家賃とは別に共益費などを設定している場合は、この点を明確に伝えましょう。なぜならば、外国では日本における共益費などに相当する費用が家賃に含まれている場合も多いからです。

 

ポイント④:無断転貸不可の旨を伝える
外国人が起こすトラブルで多いのが無断転貸です。賃貸オーナーの承諾を得ないで転貸をした場合は、賃貸契約の解除事由になることをしっかりと伝えておきましょう。

2019.05.05

消費税増税と賃貸経営の関わり

1.あらためて、賃貸経営と消費税の関わりとは

 住宅の賃料には消費税はかかりません。また、事業者を対象とした社宅でも居住用途であれば消費税はかかりません。しかし、事務所や店舗、駐車場として不動産を貸した際には消費税がかかってきます。
 ここで注意しておきたいのは「居住用物件の賃貸経営をしていれば消費税の増税は関係ないのか」ということです。結論からいうと、そのようなことは全くありません。居住用物件の賃貸オーナーにも、消費税増税の影響は大きく存在しているといえるのです。入居者から受け取る賃料には消費税がかかっていなくとも、管理会社に支払う管理手数料やリフォーム費用、さらにこれらの振り込み手数料等には消費税がかかってくるのです。

2.賃貸オーナーの消費税増税対策のポイント

①増税対象を整理しておく
 先に紹介しましたように、事務所や店舗、駐車場等の賃料には消費税がかかってきます。したがって、所有している物件において消費税を上げて請求するものと、引き続き消費税の請求はしない物件について、あらためて確認をしておくのが良いでしょう。

②増税分上乗せのタイミングを理解しておく
 消費税を上乗せして請求をするものに関しては、そのタイミングを理解しておく必要があります。増税の対象は10月1日からの消費分です。すると、事務所等の賃料の増税は「10月分」からとなります。では、賃料前払いの場合はどうなるのでしょうか。1か月前に支払いの場合、9月末までに入金いただく必要があります。この場合でも、家賃の対象が10月分であるため、消費税10%分を請求する必要があります。したがって、物件利用者に対しては、10月1日以前であっても、請求書を送るタイミングで消費税増税の告知をしておく必要があるでしょう。

③修繕等は増税前に行う
 金額の大きいリフォームや修繕等にかかる消費税を安くするためには、増税前にこれを行っておく必要があるでしょう。具体的には、2019年9月までに行うのです。注意が必要なのは、修繕等の工事請負契約の場合です。一般的には、工事完了の引き渡し時点の税率が適用されるのが原則であるため、2019年9月以前に請負業者に依頼しても、工事完了が10月を過ぎると10%が適用されてしまうのです。

④賃貸不動産の売却について
 消費税の課税事業者が賃貸不動産の売却を考えている場合は、注意が必要です。賃貸住宅の建物の売却代金には消費税がかかります。ここで、例えば土地と建物一括の売却金額を定めているケースであっても、建物分の代金の消費税分を考えて売却代金に上乗せをしておく必要もあることでしょう。そうしなければ、増税前に想定していた利益が、高くなった消費税分だけ圧縮されてしまう可能性があるのです。

3.消費税の還付について

 住宅の賃貸がメインのオーナーの多くは「受け取った消費税よりも支払った消費税が多い」という状態になることでしょう。つまり、下記のような計算式においてマイナスとなるケースです。

納める消費税額
=(売上金額×消費税率)-(仕入金額×消費税率)

 このような場合は、還付手続を行うことによって消費税を還付してもらうことが可能になります。注意点としては、「課税事業者になること」を選択していないと還付手続きを行うことができないということです。課税売上高が1,000万円を超えず、原則として消費税の免税事業者という扱いになっている方は、課税事業者を選択する旨の手続きが必要です。

4.<補足>賃料と消費税の関わり

①店舗事業等併用住宅
 先に、「居住用物件の賃料には消費税はかからないが事業用物件の賃料には消費税がかかる」と紹介しました。では、「店舗事業等併用住宅」の賃料はどのような取り扱いになるのでしょうか。一言でいえば、「住宅の部分は非課税、店舗等事業用施設の部分は課税」となります。この場合、非課税部分と課税部分を合理的に区分する必要がありますが、これには貸付面積の比により按分する方法や、近隣の建物の貸付けに係る相場によって判断する方法が考えられます。

②別荘、リゾートマンション
 別荘やリゾートマンションは、消費税法によると住宅ではなく「旅館業に係る施設」に該当するため、消費税の課税対象になります。

③下宿
 建物の中の一部を貸す下宿のことを指す「貸間業」は旅館業には該当せず、住宅賃貸に当たるので消費税はかかりません。

④土地
 土地の貸付は、消費税でいうと非課税扱いです。しかし、貸付期間が1か月未満の場合は課税の対象となります。また、利用の目的を持って土地を舗装したりフェンスを設置したりして整備をした場合は、「施設の貸付」となるため、消費税がかかります。

2019.04.03

“2019年問題”が賃貸経営に与える影響

2019年問題とは

 2015年の国勢調査では日本の人口が1920年の調査以来初めて減少し「人口減少社会に突入した」という認識は一般化してきています。しかし、未婚率の増加などの要因もあり、世帯数は増加を続けていました。このため住宅市場規模の縮小は抑えられてきましたが、2019年を境にこの世帯数が減少し始めるといわれています。いよいよ、不動産業界に人口減少社会の影響が出てくるようになってくると想定されているのです。

2019年問題によって何が起きると言われているのか?

①住宅市場が縮小する
 世帯数が減少すると、どうしても住まいを必要とする人が減ることになります。そうなってくると、需要の低下から売買、賃貸ともに市場が縮小する可能性があると考えられています。

②需要の高い地域と低い地域の差が広がる
 従来通りに住宅が供給され続けば、地域によっては空き家がさらに増えていきます。しかし、人気のあるエリアは引き続き需要を保ち続けるため、需要の高い地域と低い地域の差が広がっていくと予想されます。

これからの賃貸経営に必要となる視点

 もちろん、賃貸経営において2019年問題は歓迎されるものではありません。しかし、先にも書きましたが、生活をする場所として人気のある地域はそれを維持していくことでしょうし、世帯数が減少しても「単身世帯の割合」は変わらず増加していきます。したがって「エリア特性や賃貸ニーズの把握」「ターゲットとする入居者層の選定」などを戦略的に実施していけば、決してこの事態は悲観すべきものではないといえるのではないでしょうか。

これからの賃貸経営の視点①シニア層を入居者ターゲットにする

 シニア世代が増加し続ける日本。彼らに向けた住宅の需要は拡大していきます。そしてもちろん、単身シニアの割合も増え続けています。シニア層を入居者ターゲットする場合は、どうしても次のようなバリアフリーに配慮した物件づくりが求められます。

●手すり ●車イスが利用できるスロープ ●浴室などの段差の配慮 ●エレベーター

一方で、シニア層は「物件の立地の良し悪しをあまり気にしない方が多い」という特徴があります。彼らは「静かで落ち着いた生活」を求めており、多くの世代で需要の高い「駅近物件」でなくとも選ばれるケースがあるのです。

これからの賃貸経営の視点②資産価値の高い土地を選択する

 不動産の資産価値は、土地と建物を分けて算定することが多くなっており、土地の資産価値は主に立地などによって決まります。また、建物の資産価値はつくりやデザイン、さらに管理状態などによって決まるといわれています。そして、一般的に土地の資産価値は年月が経ってもあまり変化しない一方、建物の資産価値は時間経過とともに減少するとされています。
 土地を選ぶ際は「土地の形状」に注意をします。長方形や正方形のように形が整っている「整形地」は様々な活用方法に対応できるため、需要の高い土地になります。当然売却もしやすく、その流動性もメリットになります。L字型や三角形、傾斜地のような「不整形地」は購入時に費用面でのメリットがありますが、どうしても用途が限られてしまうため、高額で売却できる可能性が低くなります。したがって、「手頃だ」という理由だけで不整形地を購入することには注意が必要でしょう。

2018.06.17

ヤミ民泊対策のススメ

賃貸オーナーにとっての民泊リスクとは

リスク①:入居者のヤミ民泊運用
 賃貸物件を借りて民泊を運用するには「賃貸人が住宅宿泊事業(民泊)を目的とした転貸を承諾している旨」を証明する書類を地方自治体へ提出しなければなりません。つまり、賃貸オーナーに無断で民泊を運用することはできないのです。しかし、実際は「ヤミ民泊」が横行しており、無断で民泊営業をしている入居者が多く存在しています。

<事例①>
両親と住むと言って部屋を借りた男性が、民泊仲介サイトを通じて部屋を貸していた

<事例②>
社員のための住まいという名目で賃貸契約を結んだ部屋が、民泊仲介サイトを通じて無断でまた貸しされていた

現在、大手民泊サイトは「ヤミ民泊」は掲載しない方向性をとっていますが、「ヤミ民泊専用仲介サイト」なるものも登場してきています。また、民泊仲介サイトでなく、各種SNSを通じて直接旅行者に部屋を貸すといった事例も増えてきています。

リスク②:他の入居者、近隣住民からのクレーム
 民泊を賃貸物件の1室で運用された場合、他の入居者や近隣住民からのクレームがくるケースが考えられます。そしてもちろん、入居者からのクレームの場合は、退去されてしまったり契約更新がされないといったこともあり得ます。

リスク③:賃貸物件の資産価値を損なう可能性
 ヤミ民泊運用を放置してしまうと、当然入居者は離れてしまい、空室が目立つようになります。さらに、今は「口コミ」での評価が重要視される時代です。悪評が広まれば、賃貸物件の資産価値は大きく損なわれてしまうでしょう。また、ヤミ民泊は宿泊者の本人確認なども厳密に実施していないケースも多いため、物件が犯罪行為に利用されやすいということもあります。重犯罪のケースでいうと、大阪で発生した民泊監禁殺人事件など、記憶に新しいところです。

入居者から寄せられた民泊クレーム例

 実際に、賃貸物件の入居者から賃貸オーナーや管理会社に寄せられた民泊に関するクレームとしては、主として次のような内容があります。

●見知らぬ外国人が物件内にいるということで、安全性に不安を感じる
●ガラガラとキャリーケースの音が昼夜問わず聞こえてうるさい
●分別がされないゴミが増えた
●たばこの吸い殻のポイ捨てが多くなった
●外国人がエントランス付近で騒いでいる
●深夜まで酒宴が行われている
●ドアに置いてあった傘などの小物が盗まれた
●(大規模な物件の場合)共用のゲストルームが予約でいつも埋まっている

賃貸オーナーや管理会社がすべきヤミ民泊対策とは

 ヤミ民泊は、当然「賃貸オーナーに知られないように」行われます。したがって、ヤミ民泊を「見つけ出す」取り組みをしなければなりません。

施策①:物件の現地巡回を強化する
 物件の「借主以外の利用者」の存在をつきとめる最も効果的な方法です。賃貸オーナーが物件に居住していたり、近くに住んでいる場合は可能だと考えられますが、やはり手間は大変かかります。また、管理会社に依頼をする場合も、近隣にある場合は可能かもしれませんが、遠方の場合は継続的に実施するのは難しいでしょう。「実施できる環境にある方はぜひ」という施策です。

施策②:物件内における注意喚起
 入居者の立場からすると、民泊の存在は歓迎されるものではないため、民泊対策には協力的なスタンスでいると考えられます。入居者からの協力を得るには、物件内の貼り紙が有効です。例えば、エントランスやエレベーター内、ごみ捨て場などの入居者が利用するスペースに次のような内容の掲示をするのです。

●当物件では民泊としての利用を禁止しています

●民泊運用の恐れがある部屋を見つけた場合、連絡をください

 これをすることで、民泊運用をしようと考えている人にも「この物件は民泊を運用しにくい」「民泊をやってもすぐに通報される」と思わせることができ、民泊運用を未然に防ぐことにもつながるでしょう。

施策③:物件内における注意喚起
 同じく、入居者からの協力を得ての施策です。「最近、見知らぬ外国人を物件内で見かけましたか?」などの項目を入れた「居住環境向上アンケート」を入居者に実施します。民泊の存在を知っている入居者は、積極的に回答してくれるでしょう。

施策④:契約時の確認徹底
 賃貸契約の際には、明確に「民泊禁止」の旨を伝えます。契約書類等にもその旨の条項を入れておくことを忘れずに。またこのタイミングで「ヤミ民泊を見かけたら教えてください」と伝えておくのも良いと考えられます。さらに、万が一民泊を運用した場合には契約解除の理由になるなど、どのようなペナルティがあるのかを説明しておくのも良いでしょう。

施策⑤:民間の「違法民泊取り締まりサービス」を活用する
 ヤミ民泊に悩む賃貸オーナーや管理会社の増加を受け、現在はこれを取り締まるサービスもあります。「物件巡回サービス」や「民泊仲介サイトチェックサービス」なども提供されているので、こちらの活用も有効です。

ヤミ民泊を発見したら

 ヤミ民泊を発見したり入居者からの通報があった場合には、即座に状況を確認したり、中止させる必要があります。民泊トラブルの解決には各自治体の協力を得ることができますので、即座に連絡をするようにしましょう。

2017.07.11

家賃滞納対策のポイント

1.良質な入居者を選定する

 家賃滞納を未然に防ぐ最良の策は、良質な入居者に住んでもらうということです。この選定には様々なポイントがありますが、主なものを紹介します。

<良質入居者選定のポイント>

● 職業/通学先が明確である

● 勤務先信用/業種/勤続年数等が分かる

● 以前の居住場所がはっきりしている

● 住民票、印鑑証明書を提出できる

● 入居する家族関係がはっきりしている

● 支払い能力に不安が無い
→賃料が年収の30%以下が目安

● 連帯保証人をつけられる
→3親等以内が望ましいが、親族以外の場合は社会的地位があり、支払い能力が充分ある人物(職場の同僚、上司、友人は避けた方が良い)

 入居者の「人となり」も重要です。信頼できる、契約に対して真面目な人物かどうかも大きなポイントになります。これを確認するには、顔を合わせた際の物腰や雰囲気、言葉遣いなどをチェックするようにしましょう。

2.滞納時の対応ポイント
 家賃滞納が発生した際の対応内容は、滞納段階によって異なります。各段階での対応ポイントは次になります。

<初期滞納(入金の約束期日から3日以内)>

● 電話催促
 まず、電話にて状況を聞くようにします。単に忘れていたということや、たまたま振り込む時間がなかったということもあります。

<1週間滞納>

● 催促状送付
 状況をみて催促状を普通郵便で送付、またはポストに投函します。この段階でいかに早く対応をするかが重要です。

<2週間滞納>

● 催促状・電話催促・訪問催促
 引き続き催促状を送りますが、ここでは「配達証明」を使用するのが良いでしょう。また、電話や訪問にて確認もします。仮に先方から「待って欲しい」といった回答があった場合には、誓約書による支払いの約束 をしてもらいます。

<1か月滞納>

● 催促及び解約予告状・電話催促・訪問催促
 ここでは「内容証明」で書面を送ります。支払いの期日も明記し、「きちんと支払いがなければ解約」の旨もこの段階では伝えます。

<2か月滞納>

● 催促及び解約予告状・電話催促・訪問催促
 さらに支払いがないようであれば「強硬手段」を取らざるを得ないという姿勢を伝えます。送付する書面には「期日以降は不法占拠とみなす」という旨も添えます。

<3か月滞納>

● 催促及び解約明渡し通知
 「契約は解除されました、〇〇日以内の退去をお願いします」という旨の書面を送ります。「債務には法定利息を付けて支払っていただきます」という文言も忘れずに。なお、契約の合意解除に至った場合は「賃貸契約解除並びに建物明渡し契約書」を交わし、下記を確認するようにしましょう。

● 解約日の明示、以後専有権限の無いことの確認
● 明渡し期限
● 滞納家賃残高の確認と支払期限
● 原状回復義務及び敷金精算方法
● 残置物の所有権放棄及び処分の委任、費用負担等

2016.05.13

「サブリース契約に関する専門資格認定講習」が全国で受講可能になりました。

 

<<サブリース建物取扱主任者特別認定講習会のご案内(6月以降)>>

昨年12月より東京のみで「サブリース建物取扱主任者特別認定講習会」を実施しておりましたが、

6月以降はLEC東京リーガルマインドにて全国での受講が可能となります。

【実施日のタイム・スケジュール】
 ※1日程で講習会・レポート記入・提出します
 事前説明      13:00~13:10
 講習会(休憩含)  13:10~17:00
 レポート記入・提出 17:15~18:00
 
【実施日・実施会場】※以後も続々開講
 6/17(金) 水道橋本校
 8/2(火) 千葉本校
 8/3(水) 札幌本校
 8/16(火) 町田本校
 8/23(火) 静岡本校
 8/25(木) 広島本校
 8/28(日) 神戸本校

【受講料】
 29,800円 講座コード:XA16025

【お申し込み】
上記講習会への参加ご希望の方は、認定講習会実施のLEC本校、
あるいはLECコールセンターにて、お申し込みを承っております。

【資料のご請求・お問合せ】
LECコールセンター 0570-064-464

2016.03.29

リバースモーゲージカウンセラー 特別認定講習会 開催決定のご案内

今、シニア世代にとって今、一番頭を悩ませていることは「資金をどのようにやりくりしていったらよいのか」ではないかと思います。

そのお悩みを解決する一助として「リバースモーゲージ」が挙げられますが、どれだけの方がリバースモーゲージについて深い知識を有し、個々人に合ったご提案もしくは納得できる選択ができているでしょうか。

そこで、新資格として「リバースモーゲージカウンセラー」という資格をもうけ、特別認定講習会を開催することが決定いたしました。

リバースモーゲージカウンセラー」とは、

「リバースモーゲージ金融商品説明」と「高齢者取引」「高齢者のライフプランニング」の専門家。

「リバースモーゲージカウンセラー」は、金融商品「リバースモーゲージ」の商品特性とその市場性、活用方法などの知識と共に、個人に合わせた活用プランを構築するための基礎的な提案力の所持を証明できる資格です。

また、この提案をするうえで必須となるのが「高齢者取引」と「高齢者のライフプランニング」に関する知識であり、これの保有も証明することができます。

対象となる方は、士業、リフォーム業者、リノベーション事業者、ハウスメーカー、不動産会社マンション販売、保険関連事業者、リフォーム・リノベーション事業者、相続系コンサルティング会社、福祉関連事業の担当者の方など、ご提案の幅を広げられる知識を習得できますので是非ご検討ください。

≪第1回リバースモーゲージカウンセラー 特別認定講習会≫

日時:2016年4月17日(日) 10:00~16:00
 場所:機械工具会館(三田駅、田町駅)


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